人類未踏の超高齢社会をデザインする

Value Creating Design Hub for Super-Ageing Societies

京都大学 超高齢社会デザイン価値創造ユニット

工学研究科 講師 前田 昌弘先生

研究テーマ


1.ご略歴

 京都大学大学院工学研究科博士後期課程都市環境工学専攻修了。博士(工学)。日本学術振興会特別研究員・京都大学先端技術グローバルリーダー養成ユニット研究員などを経て、2013年5月より京都大学大学院工学研究科建築学専攻助教、2017年10月より同講師(京都大学大学院工学研究科付属グローバル・リーダーシップ大学院工学教育推進センターと兼務)。

2.先生のご研究について

 まちづくりが行われている現場に出向いて、まちづくりに関わるひとびとにアプローチし、研究を行っている。そのまちにある資源を住民が自分たちで活用・管理して住環境をつくっていくことをまちづくりと考えており、それをサポートする建築や(とくに住環境にかかわる)仕組み・制度のあり方について研究している。個人・家族・コミュニティの関係性は住環境づくりにおいてますます重要な研究テーマであり、時代や地域・文化によってそれらのどのような結びつきが最適であるか、国内外におけるフィールドワークや実験的プロジェクトを積み重ねることによって検討している。

3.これからの社会についてのお考え

 人口の高齢化や過疎化が問題視されており、人口構成が変化すると個人と家族やコミュニティの関係のあり方も変化することが予想される。日本は経済発展のなかで核家族化を推し進め、地域のコミュニティを犠牲にしてきたが、いま、家族やコミュニティのつながりを再度考えることも解決策を導くうえで重要であると考えている。
 限界集落の消滅が問題としてよく取り上げられるが、限界集落には意外と持続性があることも知られており、それは家族やコミュニティの部分的なつながりに支えられている。それらをいかにその場で維持するかという発想が重要であるが、一方で、自然災害など、再定住を考えざるを得ない出来事も想定する必要がある。重要なことは、コミュニティの将来を中長期的な視野からも見据え、多様な選択を可能とする手段を用意しておくことである。

4.「これからの社会のありかた」と先生のご研究の関係について

 すまいづくりは個人・家族・コミュニティのあり方によって変わるため、多様な組み合わせを想定する必要があると考えている。スリランカや東北、京都など、様々な土地でコミュニティのあり方について研究を行っているが、これらの視点をいかに建築やまちづくりに落とし込んでいくかが重要である。例えば、古い団地の再生や空き家の活用、コミュニティをかたちづくる空間を有する住居群など、建物レベルでの取り組みや具体的な設計の提案に加え、政策や地域レベルの仕組みとして提案することも行っている。

5.本アライアンスへの意見、期待

 現在行っている研究においても、建築計画学独自の理論だけではなく、社会学、経済学、人類学など、社会科学の理論を応用している部分があるため、今後も様々な分野の考えかたを学びたいと考えている。また、ほかの分野で研究されている技術やアイディア・取り組みを知ることで、まちづくりに応用し新たな取り組みにつなげることができればと期待している。