人類未踏の超高齢社会をデザインする

Value Creating Design Hub for Super-Ageing Societies

京都大学 超高齢社会デザイン価値創造ユニット

情報学研究科 教授 吉川正俊先生

京都大学大学院情報学研究科 社会情報学専攻分散情報システム分野のホームページ

https://www.db.soc.i.kyoto-u.ac.jp/


研究テーマ


1.ご略歴

 京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了(工学博士)。奈良先端科学技術大学院大学、名古屋大学、南カリフォルニア大学客員研究員、ウォータルー大学客員准教授などを経て2006年より京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻教授。

2.先生のご研究について

 データサイエンスの基盤構築と社会展開をキーワードとしてデータベースを中心とする情報システムの研究を進めている。
 具体的な基礎的研究としては、地理・空間情報システムを利用し、別々の出発地や到着地を持つ複数の利用者が合流による利益を享受する場合に最適な合流経路を求めるアルゴリズムの研究開発、データに相互依存関係がある場合の差分プライバシの研究などを行っている。また、応用研究としては、高齢者の歩行を補助するアシストカートに位置情報を組み込んだ歩行ナビゲーションシステムの研究開発、我が国の研究所や大学で作成された地球観測データやモデル生成データのためのメタデータの管理システム開発、大量電子カルテデータを用いた薬の効果の検証など、様々な研究を行っている。

3.これからの社会についてのお考え

 現在(2016年)は1980年台半ばから始まり何十年か継続している情報革命の真っただ中にあり、まだ全体の4合目程度に位置している。今はまだ技術的な置き換えが終わり社会に浸透し始めている段階であり、情報革命が進展するには人々の理解が進む必要がある。産業革命の完遂に何十年もかかったのと同様に、現在まっただ中にある情報革命も完遂までにはまだまだ時間が必要である。デジタルネイティブの人たちが社会の中枢になり、社会制度や価値観が変わって初めて情報革命が完遂すると考えている。
古い世代は「人工知能に仕事が奪われるのではないか」など新しい技術に対する防衛本能を有することが多い。産業革命に反対した人たちの"ラッダイト運動"が成功しなかったのと同様に、どのように新しい技術と付き合っていくかを考えていく必要がある。

4.「これからの社会のありかた」と先生のご研究の関係について

 これからの社会の大きな流れは所有ではなく共有といわれているが、ITによるリアルタイムのデータベースがあることにより可能となるものである。技術開発のみに固執せず、情報技術を社会にどのように生かしていくかを研究していきたい。技術の応用にとどまらず、技術の進展に伴い変化していく可能性がある価値観や、あるべき社会制度についても提示することができればと考えている。

5.本アライアンスへの意見、期待

 情報技術を専門としているが、情報は「医療情報」など情報という言葉の前にあらゆる言葉を形容詞としてつけることができる。このことからもわかるように情報はほかの分野と一緒になり横展開をしないと成立せず、社会情報学専攻はその横展開を担っている。
 ほかの分野の研究者とかかわることで視野が広がるだけでなく、ほかの分野の問題を情報の問題として解決できることや新たなテーマが見つかることもある。お互いの文化を理解し研究を進めていきたい。